- 発売日
- 2021.04.21
- レーベル
- ハイポ エスプレッソ レコード
- 規格
- DIGITAL
バイオシフターは日本人プロデューサー、スーパーコージーによる3枚目のアルバムだ。オリジナル・リリースは2015年で、彼女が南フランスのニース・コートダジュールに移住する3年前。15年にも及んだ熱帯インドネシアのバリ島における生活の中で製作したソロ・アルバム3部作では最後の一枚となった。
2005年リリースのデビューアルバム、ラグジュリー・アディクト以来、洒脱なダウンテンポにダブトロニカ、テクノやディープハウスにベースミュージックまで縦横無断にジャンルをクロスオーバーしながら実験的なエレクトロニック音楽を追求し続けてきたスーパーコージー。そしてそのスタイルはこのアルバムをもって彼女独特のスタイルへと昇華を遂げたといえるだろう。
アルバムは叙情的なアンビエント・テクノMELTで幕をあける。彼女の好きな変拍子と、透明感のあるベル音が印象的なトラックに、彼女自身の囁くような歌声が散りばめられている。とはいえ、彼女は自分をシンガーとは見なしていないし、そう認知されたいという欲望もないと言う。興味あるのはいかに曲のプロダクションを磨いていけるかという点のみで、いつも同じ声を使うのは音世界を限定するだけなので必要ないと欧米メディアのインタビューで語っている。
その信条ゆえに毎作ごとに異なるゲストヴォーカルをフューチャリングする彼女が今回起用したのは、バリ島で出会ったオランダ人シンガー兼DJのパック(ポップなメロディーにグリッチ・ハウスの要素を融合させたタイトルトラックBIOSHIFTERとDENNIS HOPPER)、前作アルバム、フルーツ・フロム・ザ・フューチャー以来コラボを重ねてきたサンフランシスコのMCリーズン(往年のThe Orbを彷彿とさせるようなサイケデリック・ベースミュージックD.I.V.E)、そして日本でも人気の高い英国バンド、ゼロセブンの歌姫ソフィー・バーカー(FEELS LIKE YESTERDAY)の3人だ。
ソロ3作目の今作に見られる他の特徴として、幾重にも配置させたアトモスフェリックなシンセ、トリッピーなサウンドスケープとグリッチの影響などが挙げられるだろう。そして全体的なプロダクションのレベルは前回のアルバムより格段に円熟味を増している。また彼女の作品にはジャズの影響が見られる曲も多く、今作ではコズミックなチルアウトNEBULA TO NEBULA(星雲から星雲へという意味)でフューチャーしたブルガリアのプロデューサー、マーティン・デネブによるハービーハンコック風のピアノが印象的だ。クラシカルな要素もエンディングのFEELS LIKE YESTERDAYにおけるバイオリンやチェロなどによって叙情的に加味されている。
バイオシフターというタイトルは彼女による造語で、バイオロジカルなシフト、つまり突然変異や加速していく進化のプロセス、を意味するのだという。Supercozi名義で発表されたファーストアルバムから丸10年目にドロップされた本作において、彼女はグローバルに認識されている数少ない日本人エレクトロニック音楽プロデューサーとしての立ち位置と、止まることなく進化し続けていくという意思というふたつのテーマを同時に見事に表現してみせたと言えるだろう。
TRACK LIST
DISC1
- 01
- Melt
- 02
- Bioshifter (feat. Puck)
- 03
- Nebula to Nebula (feat.Martin Denev)
- 04
- Dennis Hopper (feat. Puck)
- 05
- Owl in Me
- 06
- Badass Paradise
- 07
- Born Lickers
- 08
- D.I.V.E (feat. MC Reason)
- 09
- Feels Like Yesterday (feat. Sophie Barker)