KASEKI POP 2023~SUMMER TIME~
2023.08.21
event

【かせきさいだぁ】新作個展「KASEKI POP 2023~SUMMER TIME~」POP UP展「TOKYO POP by KASEKI CIDER」を8月20日(日)より同時開催

KASEKI POP 2023~SUMMER TIME~かせきさいだぁによる新作個展「KASEKI POP 2023~SUMMER TIME~」及び、 “かせきさいだぁ”が影響を受けた東京のクリエイターを紹介するPOP UP展「TOKYO POP by KASEKI CIDER」を8月20日(日)より渋谷elephant STUDIOの1Fと2Fにて同時開催。
POP UP展は「ドラゴンヘッド」「ちいさこべえ」で人気の漫画家“望月ミネタロウ”、東京のPOPを代表するイラストレーター“白根ゆたんぽ”の二人を迎え、“かせきさいだぁ”の作品も交えてのグループ展。

【開催概要】

会期:2023年8月20日(日)~2023年9月03日(日)12:00~19:00 *火曜定休
会場:elephant STUDIO 1F & 2F(東京都渋谷区渋谷2-7-4 elephant STUDIO 1F/2F)
主催:WATOWA GALLERY(WATOWA INC.)
入場:ドネーションチケット 500円(税込)~
8月23日(水)、8月30日(水)は観覧無料
右記 URL からの事前予約制 https://dashboard.artsticker.a……vent/13862

*自身で金額を決定するドネーションシステム(ミニマム500円から入場料を自身で決定し、それが若手アーティスト支援のためのドネーションとなるシステム。アーティスト支援と国内アートシーンの活性化を目的としたアートアワードWATOWA ART AWARD 2023 EXHIBITIONに寄付されます。)

イベントページ: http://www.watowa.jp/news/2023……ummer.html
HP: https://watowagallery.com
Instagram: https://www.instagram.com/watowagallery
CONTACT:gallery@watowa.jp


KASEKI POP 2023~SUMMER TIME~ ステートメント

かせきさいだぁのポップアート

― 作品に耳を澄ませれば、時代の音が聞こえてくる ―

かせきさいだぁは日本を代表するヒップホップアーティストであり、あるときは漫画家、文筆家、そして現代アーティストといくつもの多彩な顔を持つ。彼の描く作品は、すっきりと無駄のない構図や透明感のある素直な色調が印象的で、まるで軽快なシティポップを聴いているような心地よさがある。

代表的な名画シリーズでは、モナリザやゴッホのひまわり、モネの水連といった誰もが知る名画を、かせきさいだぁらしいミニマルで可愛らしい姿に描き直している。かせきさいだぁ流に言えば “名画のサンプリング” だ。既存の音源の一部を引用して再構築するヒップホップにおけるサンプリングと、名画を記号的に引用する表現手法には通じるものがある。そこには名画へのリスペクトや親しみ、愛着があり、そうした気持ちを他者と分け合いたいという高い共感性がある。好きなものを友達とシェアしたいという気持ちや、現実世界の煩雑さに抵抗するように軽さや明るさや可愛らしさを求める今の時代のムードは、かせきさいだぁの世界観と驚くほどマッチしている。コンセプトの壁を超えるためにインテリジェンスで武装しないと到達できないのがいわゆる現代アートの姿だとするなら、かせきさいだぁのアートは誰にとっても親しみやすく居心地がいい。誰も撥ねつけない大らかな作風は、いつまでも眺めていたくなる幸福感に繋がっている。

しかし、彼の持ち味はそうしたポップさや親しみやすさだけではない。一見、CGのように滑らかで正確無比に見える作品を間近で見ると、手描き独特の線のゆがみや色の塗り重ねの跡があり、彼が正真正銘の絵描きなのだということがよくわかる。手で描くことでしか成しえない人間的なゆらぎは、モチーフに生命力を与え、作品に時間の流れを生む。そうして堆積していった膨大な情報量はある種の難しさでもあるのだが、「人間は情報量の多さこそを面白さと捉える」ということをかせきさいだぁは熟知している。

ミュージシャンとして活動するより以前、彼はゲーム会社のグラフィック担当として、ゲームのキャラクターや背景を制作していたのだという。フェルメールの《真珠の耳飾りの少女》の瞳がパックマンを象った作品があるが、ゲームクリエーターのキャリアが分かるとその遊び心にも納得だ。使える色数も少ない黎明期のゲームグラフィックの世界にいたからこそ、手描きの良さや画面に込められた情報量が人間に与える影響を深く理解している。長く画面を見続けたいという欲求は、人間が対象を面白いと感じる感覚とリンクしているのだから。分かりやすさと複雑さの絶妙なバランスこそが、見る者の心をひきつけてやまないかせきさいだぁの作品の魅力になっている。

沓名美和